「スカイロブション」
都市計画プロジェクト 4 UAE、バージル
[ UAE、ドバイ、砂漠の都市、バージル州都、バージル地区。、2030年8月 建築家 高尾瞬 ]
「こんな場所に本当に建物が建つのだろうか?」
4WDをチャーターし、私はドライバーと2人でバージル地区を訪れた。
アブラハムから手渡された地図をもとに、
黄金の都市、ドバイから北に約4時間北上し、たどり着いた辺境の地、バージル。
途中、幹線道路は途切れ、砂漠の中を太陽と方位磁石を用いての走行だった。
私は何度もドライバーに「本当にこの方向でいいのか?」と問い合わせていた。
ドライバーも、この地に黄金の都市を築くなんて、まったく信じられないよ。
そんな顔つきでバージル地区を目指していた、、。
「ポテンシャルを秘めている。バージルは無限の可能性を秘めている土地だ。」
アブラハムはそう豪語していた。
「石油資源をもとにこの土地に都市を築くなんて、神への冒涜ではないか、、。」
「我々は命ある限り永遠の繁栄を義務ずけられた生物、人間。 だが、、、、。」
不安ばかりが先行した。
昼間の天候は灼熱の太陽。
それはドバイ近郊の繁栄を表すのに相当するきらびやかな景気であった。
だが、夕刻になり、陽が沈む頃には大地の下からうめき声を上げた
石油、戦争の火種となるこの資源のネガティブな側面が、
地獄の化け物となって大地を飲み込むようであった。
陽が沈めばその異様さも増していき、私の中には不安が立ち込めていた。
その3日後だった。
私はアブラハム夫妻に、ドバイ有数の建物である、ブルジュハリファにて、
「スカイロブション」に誘われた。
約300種類以上のワインと世界最上階、豪華レストランで行われる、
噂に聞いていた高級ディーナーコース。
「スカイロブション」
私が、アブラハムからの都市計画の依頼を、正式に受け取ったのはこの時だった。
「しゅん!どうだった?バージル地区は?いかすだろ?お前の挑戦を待ち望んでいただろ?」
私は、アブラハムからの「挑戦」という言葉に反応した。
そうだった、思い出してみよう。
私は物足りないこの世界にうんざりしていたのだ、
私の技量はもはや世界最高水準の建築。
今、建築と言う、最高水準の事業に私は身を置いている、
身が滅びるまで挑戦してやろうではないか、私に不可能などない。
いつでも失うものなど何もない。
「ああ、手ごわい敵になりそうですが、楽しそうですね。やってやりますよ。」
私はアブラハム夫妻にうなずきとアイコンタクトで答えた。
麻山工業株式会社
建築家
高尾瞬
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