都市計画プロジェクト 3 UAE、バージル


[ UAE、ドバイ、砂漠の都市、バージル州都、ハウスオブアブラハム、プール、2030年8月 建築家 高尾瞬 ]





初期の頃はひたすらラフを書く、イメージを掘り起こす作業の連続であり、
この作業では特に決まりは設けないようにしている。


なぜならここで蓋を被せること。


犬や猫にくっついているノミ、このノミにコップを被せると、

最初、ノミはコップの底辺、つまり天井にガンガンと
体をぶつけ飛び出そうとするが、

しだいに身の丈にあった分だけしか飛ばなくなる。



この様に適正サイズになる。



建築のラフも同じ、ここで妙に小さな小箱を被せると
妙に小さくおさまってしまう。



今回は限界が特に決まっていないサイトでの都市構築になる。


ラフの段階でけんぺい率のケの字も出てこない、
とにかくひたすらとイメージを膨らませる亊だけに集中していった。




集中というよりも遊びに近い発散であった。

というのも

私がアブラハムから計画を打ち明けられた直後、いきなり、の都市計画に夢中になり、
バージル地区のセントラル、中心街の役場、

宿泊施設から病院、警察署、これらをいきなり描くことから始めてしまった。



これを白紙に戻したのはアブラハムの
たわいもない一言であった。





「しゅん、とにかくまず、プールをつくってくれ。」


「オレはプールで泳ぎながら、
しゅんが何をどうつくるかじっくり楽しんで見ていたいんだ。」



「プール?」 私は拍子抜けした。


だがこれが私にとってあせる気持ちを抑え、心を軽くする一言になった。

アラブの国々ではプールにつかる。水に漬かる行為事態、王族の証であった。


日本では数百円払えば簡単にプール、水に漬かって心地よい気分を味わえるが、
ここは砂漠のド真ん中。水さえ貴重な砂漠地帯。



そもそもの文化の違いも考慮し、
いっそうの遊び心と気持ちの面でのリラックスをふんだんに取り入れるべきであった。


それをアブラハムは私に伝えたかったのだと思う。


「あせらず、ゆっくり行こうぜ。」


「俺達は神になりきり、これから黄金の都市を建設するんだぜ。」



アブラハムはウィスキーをグイッと飲みほし、盃をこちらに掲げていた。



セントラルは後にして、
私はアブラハムの5個目の別宅とそれに付随するプールを描くことに専念した。













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